「生きるんじゃよ!!!オラと一緒に生きておくれよ!!!」ひとりぼっちのメスのタヌキがヒトの赤ん坊を拾い育てるアニマルファンタジー『どうぶつの国 完全版』
明日を強く生きる力をもらいたい人にオススメのアニマルファンタジー作品。
両親を山猫に食べられてしまい、天涯孤独となったメスのタヌキのモノコは、川で魚を取ろうとしていると、上流から見慣れない籠が流れてきた。
食べ物が入っているのかと思い取り上げてみると、なんとそこには人間の赤ん坊が眠っていたのであった。
モノコはとても驚いた。初めて見た生き物にひどく困惑した。しかも赤ん坊である。なぜ川から赤ん坊が流れてきたのか、まったく理解できなかったのだ。
落ち着かない様子でほっぺをつついたりつねったりしてみる。すると、赤ん坊が笑った。その笑顔の可愛さに胸打たれたモノコは、赤ん坊を村まで連れて帰ることにした。
なんとか食べられるものを見つけようと、縄張りを出て牛たちの住むところへ行く。
そして、途中山猫に襲われながらも、命からがらミルクを絞って赤ん坊の元へ戻ってきたのであった。
慌てるモノコに、留守の間赤ん坊の様子を見ていた老ダヌキが諭す。この子は「生きる」ことを拒否している。ここへ来る前によっぽどひどい目にあったのだろう。だから乳ももう飲まない。生きる力のないものはあきらめるしかない。
そんなことはないと高い高いをしてあやそうとするモノコだが、赤ん坊は力なく笑うだけである。
モノコは赤ん坊に問いかける。どうして生きることを拒否しているのかと。まだ赤ん坊なのに、そんなに辛いことがあったのかと、モノコは赤ん坊を撫でながら語りかける。すると、あることに気づいた。
なんで、そんなに冷たくなっているのに……今にも死にそうなのに……笑っているんだ……。
モノコの感情が爆発する。
ぜったい、このまま死なせない……!!
まず、この冷えてしまった体をなんとかしないと。
モノコは急いで仲間を呼ぶのであった。
薄れゆく意識の中で、赤ん坊は夢を見ていた。母親の夢。自分がまさに川へ流される瞬間の夢。
「あなたを背負っては…私も生きられない」
その言葉が「闇」を生み、赤ん坊の意識を飲み込んでいく。世界から光が失われ、そして、真っ暗になった。
しかし、赤ん坊は周りが何やら騒がしいことに気付く。それと同時に、冷え切った体がだんだん温まってくるのを感じた。
言うことをだんだん聞かなくなっていく体に逆らい、ゆっくりと目を開けてみる。すると、
大勢のタヌキたちが集まって、ドーム状の空間を作り出していた。しきりに体を震わせ、熱を発するように動いている。
そして、自分を抱き抱えるようにモノコが立っていた。赤ん坊が目を開けたことに気づくと、モノコは語りかける。
生きることをあきらめていた赤ん坊に、自分の子になれと言うモノコ。何があってもぜったい離さない。必ず守る。だから一緒に生きてほしい。そう必死に語りかけるのであった。
モノコは赤ん坊に再度ミルクを飲ませようとする。
口に流し込まれる液体。もしかしたら、さっきの言葉が届いたのかもしれない。赤ん坊は先ほどと違い、それを吐き出すことなく飲み込んだ。ごくごくと飲む。どんどん飲む。そして
力いっぱい、泣いた。
強く強く、泣いたのだった。
泣き終わったらまたミルクを飲み、そして泣く。その様子を見て、モノコたちはもう大丈夫だと安堵するのであった。
その後、二人は一緒に暮らすことになった。
動物たちが暮らす世界で、唯一紛れ込んでしまった「人」の赤ん坊。この赤ん坊が後に少しずつ奇跡を起こしていくのであるが、それはまた別のお話。続きが気になったらぜひ本編をどうぞ。今日を強く生きるあなたを支えてくれる「言葉」にきっと出会えるはずだから。
©MAKOTO RAIKU 2019